Bladelius Syn 、 Tyr の組合せで聞く Minima Vintage と オリジナル Minima
Bladelius
“Syn(シュン)” CD/SACDプレーヤー
Bladelius
“Tyr(チュール)” プリメインアンプ
Minimaの直前にテストし、その結果が良好だったBladeliusのSynとTyrでVintageを鳴らしてみると、相性が非常に良かったので(輸入元が同一なのは偶然で、輸入元のノアに対する配慮はしていません)この組合せを使って新旧のMinimaをテストしました。この組合せで気に入っているのは、楽器の色彩感(音色)の表現がデジタルの枠を遙かに超えてレコードやテープを聴いているのでは?と錯覚するほど拡大することです。アナログ関係では、評価の高いSHUREのMMカートリッジの音色の変化が乏しく感じられ、個人的にはあまり好きになれない音なのですが(多くの国産製品も同様、特にAccuohaseは色彩感が薄い)、SHUREで聞くアナログレコードよりも、SynとTyrで聞くCDの方が、色気があると思います。
この組合せの「色気が濃い」ということは、テスト中3号館を訪れた多くのお客様も同意見でした。とにかく、気持ちよく肌に馴染み、音楽に引き込まれるサウンドです。Grandpianoなども鳴らしてみましたが、同様にマッチングは素晴らしいものでした。
ボーカルや弦楽器の音は、特にしびれます。そのかわり、ROCKやスピード感のあるJAZZなどでは、リズムがやや重く音が弾まない印象があります。独特の良さ=癖の強さ、だと言うことを強く認識させられます。特定のソフトは、あり得ない!くらい非常によく鳴らしますが、それと相反する少数のソフトは、物足りなく感じることがあります。オールマイティー・プレーヤーではありませんが、オーディオとはそう言うものであって良いと思います。また、そういうものであればあるほど趣味性が高く、愛着も強くなるのではないでしょうか?
とにかく、Bladelius Syn+Tyrの組合せで聞くSonusfaberは、オーディオの一つの形として完成していると思います。一度聞いてみませんか?理想の音に巡り会えるかも知れませんよ!
オリジナルのMinimaにも前期モデルと後期モデルがあって音質が微妙に違います。後期モデルの方が高域がより高いところまで伸びて見通しが良く、レンジもやや広く現代的にリファインされた感じがします。今回は、その後期モデルとの音質を比較しました。
NORA
JONES (女性ジャズボーカル/CD)
オリジナル Minima
(後期モデル)
ノラ・ジョーンズの声に僅かにエコーが掛かり、心地よい響きが出る。女性らしいしっとりとしたボーカル。音はやや明るめで年齢よりも少し若い感じがする。
ピアノは、響きは美しいがタッチがやや軽い。
ウッドベースも音色は美しいが量感が少し足りない。
帯域バランスは、とても自然。
ボーカルの表情は、細やかでしかもリッチ。説得力があってぐんぐん引きつけられる。
サイズを感じさせないかなりの量感で鳴るがサイズなりの低域の限界も感じられる。ボーカルや小型の楽器の音質は、他のスピーカーでは感じられないほど甘く繊細で透明感も抜群だが、ウッドベースなど低音楽器のサイズや音量がやや小さめになる。
Minima
Vintage
一回り大きなスピーカーに変えたのでは?と感じるくらい中音と低音の量感が増える。サブウーファーによって中高域の明瞭度や伸びやかさが改善するように、ツィーターの音もワンランク以上上質になる。オリジナルMinimaで感じていた「音の曇り」のようなものが綺麗に消えて、透明感が一段と向上する。
ピアノはアタックの切れ味が増して、音色の変化も大きくなる。響きの美しさにも磨きが掛かる。
ウッドベースの量感もアップして不足感がほぼ消える。
帯域バランスの自然さは揺らがないまま、周波数レンジが上下に拡大し、細やかさや質感も向上する。
オリジナルMinimaで感じた小さいスピーカーが鳴っているような感じがほぼ解消し、低域の量感を含め不満をあまり感じなくなる。バスレフポート口径とネットワークの見直しによる効果だろう、低域の不足感、無理に拡大している感じがなくなって、不満感、不足感がほぼ消えている。このソフトを聞く限り、失ったものは何もなく、大きくリファインされたといって良いと思われる。
上松美香(アルパ)
オリジナル Minima
(後期モデル)
小型のハープ、アルパを使った器楽曲を聴いてみる。
Minimaは、こういう音楽や楽器構成の曲にピタリとマッチする。弦を弾くピンッという音とそれに続く甘い弦の響き、弦が奏でるハーモニーが素晴らしく美しく、そして情緒豊かに聞こえる。
何とも言えない「溜」が音に感じられ、リズムの強弱、透明なハーモニーの混ざり具合が絶妙だ。
小型スピーカーならではの澄みきった音と、Sonusfaberならではの美しい木質的な甘い響き。まるで天国で聞く音楽のように、柔らかく優しく体を包んでくれる。演奏もそれを鳴らすオーディオセットも素晴らしい!
Minima
Vintage
オリジナルMinimaで感じた「甘さ」が少し薄くなり、良く言えば癖の少ない音、悪く言えばより普通の音になるが、弦の透明感は一層際立ってくる。
同じ音楽を座席位置を変えて聞いているような雰囲気だ。間接音が少し少なくなって直接音が多くなる。響きの成分とアタックの成分の比率が変わってアタックが強く、響きが少し少なくなるが、それでも他の多くのスピーカーと比べるなら、この木質的な響きの美しさはすごい。このページ上の製造工程でもわかるように、吸音材を少なくし「上質な無垢材本来の響き」を生かしているSonusfaber製品の良さが遺憾なく発揮された結果だろう。
オリジナルMinimaできく「アルパ」が天上のサウンドなら、Minima Vintageで聞くそれは、地上の至高のサウンドだ。あり得ないレベルではないけれど、最高のレベルの音だ。ソフトによってオリジナルMinimaが良いと感じることもあれば、Minima
Vintageの方が良いと感じることもある。「アルパ」の中に収録されている曲でも、オリジナルMinimaが良いと感じる曲もあれば、Minima Vintageがよいと感じる曲もある。比べるものではなく、両立する製品なのかも知れない。ただ、対応するソフトの数、ソフトを選ばないという性格はリファインされたVintageが優れているのは間違いがない。
マイルス・デイビス(JAZZ)
Minima
Vintage
順序を入れ替えてMinima Vintageから聞いてみる。
どうだろう!このマイルスのトランペットの素晴らしさ!唇の雰囲気、ミュートされ歪んだペットの響き、こちらに向かって飛んでくる圧力感!すべてが完璧だ!
ベースの量感も素晴らしい。
ピアノの音色の美しさ、木質的とも金属的とも言えない、その微妙なピアノ独特の響きが見事に再現される。
音質は素晴らしい。最高級のレコードで聞く音にかなり近いイメージでマイルスが鳴ったのには、正直かなりおどろいた。こんな音は、なかなか聞けるものじゃない。まして、デジタルでこんな音が鳴るなんて!
難を言うなら、曲調がやや明るくなりすぎることだ。マイルスは、もう少し暗い音、黒い音で聞きたいと感じるが、それは欲張りすぎかも知れない。必要があれば、アンプやCDプレーヤーの組合せでその問題は完全に解決する。スピーカーに問題はない。
オリジナル Minima
(後期モデル)
ペットの音に粘りと中域の膨らみ、厚みが出る。暗さ、黒さも出て、よりマイルスらしい「くすんだ」音になる。落ち着いた音調で、こちらの方を好ましく感じる。しばらく鳴らしていなかったために、一曲目ではどうやら本領を発揮していなかったようだ。少し鳴らしたことで中域の濁りが取れて透明感と高域方向への伸びの良さが出て来たようだ。
それでもベースの力感は控えめ。
ピアノの音色は、Vintageほどは輝かないけれど、落ち着いて渋いイメージが出る。この曲に関しては、この音の方が好ましいと感じる。
音質という部分では、やや後退した感じがあるが、音色が煌びやかすぎた?Vintageに対して、SHUREのカートリッジが持っているような「モノトーン感」が出て、この時代のJAZZの音質の雰囲気が強く味わえる。私としては、オリジナルMinimaで聞くマイルスの方が、イメージ的にしっくりきた。
ヒラリー・ハーン(バイオリン協奏曲)
オリジナル Minima
(後期モデル)
調子の出て来た?オリジナルMinimaでやや編成の大きな曲を聞いてみた。
マイルス同様、落ち着いたバランスが心地よい。バックのベースの量感も徐々にアップして、あまり不満を感じなくなる。バイオリンは、艶やかだがさっぱりした感じもあって、清々しいイメージ。曲は、滑らかに躍動する。
多くの楽器が入ったときの分解能力がやや足りないため、音は広がるが少し濁りがあって、特に中低音が団子になってしまうことがある。マイルスでは、感じなかった濁りが感じられる。
不満はなく音楽を心地よく楽しめるが、もう一歩の分解能力が欲しいと感じる。
Minima
Vintage
気になっていた濁りが消えて、空間がパーッと一気に広がり、見通しも良くなる。バックの低音楽器(チェロ、コントラバス)の圧力感や分解能力が大きく向上する。
バイオリンの音にも一層の冴えが出て、チェロ、コントラバスとの音の違い、倍音構造の違いが明確に感じられるようになる。明らかにこちらの方が、生っぽく上質だ。
曲が進むにつれて、徐々に不満を感じ始めるようになっていったオリジナルMinimaだが、Vintageは逆に曲が進むにつれて、引き込まれてゆくような魅力を感じる。
この曲に関しては、VintageがオリジナルMinimaを大きく上回った。
ボズ・スキャッグス(SOFT ROCK)
Minima
Vintage
響きが多く、音がやや甘めのMinima VintageとBladeliusの組合せでROCK(ハードではないが)を聞いたらどうなるか?テストしてみた。
低音のパンチはどうだろう?これがこのサイズのスピーカーとは到底信じられない驚くべき量感のある低音。切れ味もなかなかだが、密閉型のドライな低音とは違ってどうしてもややウェットになる。リズムがほとんど遅れないのが救いだ。
ボーカルの表情は抜群。
バックの弦の音、シンセサイザーの音などは、非常にクッキリと透明感が高い。
じっくり聞いてゆくと、ノリの良さも伝わってくるが、グングンと押してくるタイプではない。この程度のライトでソフトなロックなら問題なく聞けるが、もっとハードなものになるとちょっとしんどくなるかも知れない。曲調がバラードになるとMinima Vintageは、俄然本領を発揮する。しっとりと訴えかけるようなそのボーカルを聞かせたら・・・、どんな女もいちころ?かもしれない。ボズ・スキャッグスとは、もともとそういう方向のお洒落なロックなのだからそれでいい。
このソフトでは、SAXの音がリードの音質と感の震える感じと厚みや木質的な感じも出て絶品だった!
オリジナル Minima
(後期モデル)
全体的に音に粘りがなく、さっぱりとする。マイルスのペットと全く逆の印象だ。色彩感も薄れ、なんだか音楽全体が軽薄になったような感じすらする。
訴える感じがなく、ただリズムが刻まれている感じ。なんだかあまり良くない。
低音の反応は、Vintageと大きな差はないが、量感と厚みではVintageがオリジナルMinimaを大きく上回る。もしかすると、この中低音の厚みと量感がこの大きな差を生んでいるのかも知れない。
低音のリズムセクションが特に重要になる、ROCKでその差が顕著に出たのだと思われた。
オリジナル Minima
+ 逸品館オリジナルバージョンアップ済み品
最後にオリジナルMinimaのユニットを総入れ替えして、トルク調整などを行って高音質化を図った逸品館のオリジナルバージョンアップ済み品を聞いてみた。このサービスを始めてからもうかなりの数のMinimaをバージョンアップしたが、元に戻して欲しいとは一度も言われたことがない(改悪といわれる事は一度もない)のが自慢のサービスだ。価格もリーズナブルなはずだ。
低音がVintageに近いくらい低いところまで伸びる。反応スピードは、大きくアップする。声の表情のきめ細やかさでは、甲乙付けがたいが躍動感、エネルギー感は大きくアップする。オリジナルMinimaでは、スピーカーから後方に向かって音像が広がったのに対してバージョンアップ後は、ボーカルがどんどん前に出てくる。音量も明らかに大きくなる。
音の分離感や切れ味、押し出し感、エネルギー感はすべて向上し、端的に言って「鳴りっぷり」がずいぶんとエネルギッシュになるが、オリジナルMinimaが持っていた繊細さやデリケートさも失われない。
低音のパンチは格段の差があるから、このソフトを聞いている限りオリジナルMinimaとの差は歴然だ。
Vintageと比べても、低音のスピード感、中音の押し出し感は勝っている。ただし量感と厚みは、Vintageには適わない。
さっぱりとした、音離れの良い音に変化する。艶やかさはやや後退する。エネルギー感、押し出し感は大きく向上するが、オリジナルMinimaの持っていた独特の「甘さ」は、やや失われる。
全体的には改善されたと思われるが、音調は少し変化するため、好みが分かれることがあるかも知れない。ただし、最初に書いたように「元に戻して欲しい」といわれたことはない。もし手元にあるオリジナルMinimaの調子が悪い(音が濁る、低域がもこもこする)と感じられたなら、このバージョンアップサービスを考えても、後悔しないと思う。