スエーデンの想い出は、新鮮で美味しい空気 ・ 穏やかで飾らない親切な人々 ・ そして豊富な水です。BLADELIUSを聞いていると、なぜか「せせらぎの音」が聞いてみたくなったので、逸品館でも販売している「せせらぎ」のCDをかけてみました。
全く違和感を感じない、自然な音質です。低音は豊かではありませんが、必要にして十分。水の撥ねる音の変化(弾ける音、流れる音)や透明感や鳥の声の表情がとても豊かに再現されます。滑らかで「瑞々しい」という言葉がふさわしいフレッシュな音です。
ここでCDプレーヤーとプリメインアンプそれぞれの音質を探るために、CDプレーヤーをAIRBOW SA10/Ultimateに変えてみました。
音が明るくなり空気の温度感が上がります。細やかさが向上し、水の音、波の音、鳥の声、それぞれの分離感が向上します。synで感じられなかった「空気の動き」のようなものまで感じ取れるようになります。しかし、個々の音がしっかり聞こえるため、全体に音がやや近くなったように感じられるます。しばらくすると、慣れてきて違和感は完全に消えますが、切り替えた直後のバランスはsynとの組合せの方が“リラックス”して聞こえる感じがしました。
次に、CDプレーヤーをsynに戻してアンプをSST
Ambrosia+Ampzilla2000の組合せに変えてみました。
空気が一段と澄みきって、空間の密度感と広がりが俄然アップします。水の流れのうねりは大きくなり、鳥の声の表情にも深みと余裕、力強さが感じられるようになります。とてもいい音です。SA10/Ultimateとの比較でも感じましたが、synとtryではsynのほうが支配力が強く、音も良いと感じます。少なくとも、30万円中頃までで比較できる国産品はもちろん、他社の製品(Unison
ResearchやAudio
Analogueなど)と比べても音質は確実に一枚上手だと思います。synの良さは、自然で違和感がなく滑らかなこと、濁りが少なく透明感が高いこと、驚くほどきめ細かい音が立体的に再現されることです。低音の量は、普通でさほど多いわけではありませんが、必要にして十分です。知的で品格を感じる、センスのいい音に仕上げられていると思います。
再び、synとtyrの組合せに戻して、ボーカルのスタンダード「ノラ・ジョーンズ」を聞いてみました。
ギターの金属的な音のアクセント、ボーカルの滑らかで艶っぽい質感、それらはもっと高額なオーディオセットを凌ほどのものです。国産品ではLUXMANの製品と同傾向の「柔らかさを感じる」音ですが、LUXMANよりもさらに木目が細やかで滑らかです。広がり感、立体感も豊富で音楽の表情も豊かです。
ノラ・ジョーンズは、ライトなタッチで歌いますが、音は適度にリッチで細くはありません。高域は透明で繊細ですが、輪郭が強調されることのない「アナログ的なタッチ」の音です。初期のプロトタイプでは、CDしかかからなかったのですが輸入直後に実施された「ファームウェアのバージョンアップ」でsynは、SACDの再生にも対応するようになりました。ためしにノラ・ジョーンズのSACDを再生しようとすると「SACD−6」の表示が出てサラウンド(Multi−ch)トラックが演奏されます。本体では切り替えできないので、リモコンの適当なボタンを押してみましたが2chへの切り替えができず上手く再生できませんでした。この不具合は、メーカーへ報告し改善を要求します。プログラムの変更で解決するので、さほど難しいことではないはずです。
このソフトで感じるのもCDとは思えないほど、豊かな色彩感が再現されることです。ほとんどの国産CDプレーヤーが細かい音は再現できても、楽器の音色(外国人は良くトーンと表現する)が薄く、モノトーンに感じられる製品が多い中でsynの音色の豊富さは群を抜いています。音色の多彩なAIRBOW製品でさえ凌駕するほど素晴らしい仕上がりです。
次に2chのSACDを再生し、音を聞いてみました。最近、AIRBOW製品を作っていても感じるのですが、良くできたCDプレーヤーで聞くCDの音は、SACDとほとんど落差がありません。synもその好例に漏れずSACDをかけてもCDとの差をほとんど感じません。それは多分、SACDに記録されたDSD信号をPCMに変換して再生しているせいもあると思います。synに搭載されているDACは、192KHz/24bit対応品です。44.1KHz/16bitで記録されたCDは、デジタルフィルターによって176.4KHz/24bitにアップサンプリングされて再生されますが、このアップサンプリングとビット伸張(16bit→24bit)が適正に行われた場合、私たちにはCDがまるでSACDになったように聞こえるように思うのです。この素晴らしい音質を始めて体験したのは、AIRBOW
UX1SEでしたが、最近の低価格製品でも同じように(もちろん、程度が違うので全く同じではありませんが)CDとSACDの落差を感じない製品が現れ始めました。
そういう意味でsynは、ずば抜けて音が良いCDプレーヤーであると太鼓判を押すことが出来ます。
syn+tyrの組合せでかけると“ボサノバ”は、まさに「昼下がり」のリラックスした雰囲気で聞けます。もう少し“ねっとり”とした感じが欲しい気もしますが、これはこれで素晴らしいバランスです。電気を介して音が出ているとは、全く感じられません。驚くほど高度にチューニングされバランスした素晴らしい音です。少なくともCDプレーヤー+プリメインアンプのセット価格70万円クラスでこれほどの音を出せる製品は、ほとんど見つけられないはずです。
流暢に流れるハーモニーとシンバルのアクセントの対比の鮮やかさ。ピアノとギターの音色の美しさ、男性と女性ボーカルの見事な絡み・・・。完璧に近い仕上がりです。